2015年 06月 08日
研修旅行2日目 |
研修旅行2日目「終日自由行動日」
・昨日の夕方頃から降り出した目がきれいに上がり、絶好の研修日和で2日目をスタートしました。
2日目は終日自由行動となり、奥入瀬渓流、十和田湖を経由して、今回の旅の一番の目的である前川國男さん設計の建物が多く残る弘前市に向かいました。ご紹介するのはなかでも印象的だった弘前市民会館、弘前市立博物館です。
弘前市民会館
・素材感を大事にした素晴らしい空間
この建物は事務所棟、ホール棟をブリッジでつないだ2棟で構成されています。まずは、事務所棟からです。アプローチとなるピロティ、風除室は天井高が低く、仕上げ材の色味も抑えられているため、連なる空間への序列を感じさせます。
入口に入ると床のパターンで吹き抜け側に自然と視線が誘引されます。
吹き抜けには階段が据えられており、上へ視線を誘うとともに隣接した部分のステンドガラスがある程度光の侵入を抑制することで休憩の場としても利用されているホールが落ち着いた雰囲気に満ちています。
吹き抜けに面して、コンクリート打ち放しのベンチが据えられており、それを取り巻く廊下部分のレベルが高く設定されています。周囲につらなる管理動線に対して、空間がずるずる伸びて行かない印象を受けます。この建物のメインとなる部分を大事にしている扱い方は大変参考になります。
吹き抜けの周囲は階段と廊下が連なり、一筆書きで回ることが可能な構成となっており、動線によってもより吹き抜けの中心性が高められています。天井の照明配置は同じく前川國男さん設計の「東京文化会館の天の川をイメージした照明配置」を思わせる構成で、カチッとした空間のなかでランダムな配置がちょっとひといき抜けるような印象を受けます。
また、吹き抜けに面したカフェは低く抑えられた風除室部分の上部にあるため、天井が高く、吹き抜けに対しては一面だけ接する構成としています。入口部分においても踊り場部分から半階分あがる構成としているため、適度な距離感と特別な場所として位置づけさせており、お客さんが落ち着いて過ごす工夫は素晴らしいと感じます。
続いて、ピロティでつながるホール棟に向かいます。
入口の構成は事務所棟のように天井高を低く抑えており、内部空間は天井高さと仕上げ材が連続し、来客を自然とホール内に導く構成となっています。
ホールに連続する通路部分は水平に広がる空間となっていますが、利用者が休憩するための場所にもなっています。休憩する場所と通路部分を同じ空間内に定義するために様々な工夫がなされています。
まず、通路に面するカーテンウォールの巾とタイルの床パターンが関連付けられており、光の広がる部分と休憩場所となる落ち着いて過ごす場所との関係が穏やかに感じられるようになっています。
また、事務所棟同様壁面のところどころに設けられたアルコーブ状のへこみは連続する空間を適度なモジュールに抑える役割を果たしており、外観、内観相互に効果的に働いています。その他にもゆるやかにカーブした折り上げ天井や、ペンダントライトのピッチなどひとの居場所となる部分には、ここが落ち着く場所であると感じさせる構成をとっています。
続いて、この建物のメインとなるホールに入ります。内の壁面は木質系パネルで統一されており、廊下部分のコンクリート打ち放しとのコントラストが効果的に働いています。この場所は多くの人が集まって落ち着いて観覧する特別な場所であると感じさせます。
ホールから外に出た際にはカーテンウォール越しに広がる外部空間が迎えてくれる構成となっており、近くにある休憩スペースにとどまりたくなります。
そこから、屋外への動線としては下階につながる階段のクランクが自然に外部に導いており、観劇を見終わった後に通る階段として、ゆったりとした印象を与えています。
弘前市立博物館
市民会館の北側に隣接して建てられています。残念ながら、当日は休館日であったため、外部からの見学をなりました。
この建物の外装は前川國男さん設計で多くみられる赤レンガ打ち込みタイルが用いられています。市民会館の本実型枠を用いた打ち放しコンクリートと表情が対象的です。建物の用途上重要物品を収蔵するため、それらを保護するための躯体を保護している印象を受けます。当時のコンクリート技術を鑑みた結果、テクニカルアプローチに基づきタイル打ち込み工法の採用に行き着いたものと思われます。
現在において、市民会館や同じく前川さん設計の東京文化会館は素晴らしい状態で維持されています。博物館のような場合においても、同様のアプローチによる前川建築を見てみたかったと感じました。
(文責:庄司)
・昨日の夕方頃から降り出した目がきれいに上がり、絶好の研修日和で2日目をスタートしました。
2日目は終日自由行動となり、奥入瀬渓流、十和田湖を経由して、今回の旅の一番の目的である前川國男さん設計の建物が多く残る弘前市に向かいました。ご紹介するのはなかでも印象的だった弘前市民会館、弘前市立博物館です。
弘前市民会館
・素材感を大事にした素晴らしい空間
この建物は事務所棟、ホール棟をブリッジでつないだ2棟で構成されています。まずは、事務所棟からです。アプローチとなるピロティ、風除室は天井高が低く、仕上げ材の色味も抑えられているため、連なる空間への序列を感じさせます。
入口に入ると床のパターンで吹き抜け側に自然と視線が誘引されます。
吹き抜けには階段が据えられており、上へ視線を誘うとともに隣接した部分のステンドガラスがある程度光の侵入を抑制することで休憩の場としても利用されているホールが落ち着いた雰囲気に満ちています。
吹き抜けに面して、コンクリート打ち放しのベンチが据えられており、それを取り巻く廊下部分のレベルが高く設定されています。周囲につらなる管理動線に対して、空間がずるずる伸びて行かない印象を受けます。この建物のメインとなる部分を大事にしている扱い方は大変参考になります。
吹き抜けの周囲は階段と廊下が連なり、一筆書きで回ることが可能な構成となっており、動線によってもより吹き抜けの中心性が高められています。天井の照明配置は同じく前川國男さん設計の「東京文化会館の天の川をイメージした照明配置」を思わせる構成で、カチッとした空間のなかでランダムな配置がちょっとひといき抜けるような印象を受けます。
また、吹き抜けに面したカフェは低く抑えられた風除室部分の上部にあるため、天井が高く、吹き抜けに対しては一面だけ接する構成としています。入口部分においても踊り場部分から半階分あがる構成としているため、適度な距離感と特別な場所として位置づけさせており、お客さんが落ち着いて過ごす工夫は素晴らしいと感じます。
続いて、ピロティでつながるホール棟に向かいます。
入口の構成は事務所棟のように天井高を低く抑えており、内部空間は天井高さと仕上げ材が連続し、来客を自然とホール内に導く構成となっています。
ホールに連続する通路部分は水平に広がる空間となっていますが、利用者が休憩するための場所にもなっています。休憩する場所と通路部分を同じ空間内に定義するために様々な工夫がなされています。
まず、通路に面するカーテンウォールの巾とタイルの床パターンが関連付けられており、光の広がる部分と休憩場所となる落ち着いて過ごす場所との関係が穏やかに感じられるようになっています。
また、事務所棟同様壁面のところどころに設けられたアルコーブ状のへこみは連続する空間を適度なモジュールに抑える役割を果たしており、外観、内観相互に効果的に働いています。その他にもゆるやかにカーブした折り上げ天井や、ペンダントライトのピッチなどひとの居場所となる部分には、ここが落ち着く場所であると感じさせる構成をとっています。
続いて、この建物のメインとなるホールに入ります。内の壁面は木質系パネルで統一されており、廊下部分のコンクリート打ち放しとのコントラストが効果的に働いています。この場所は多くの人が集まって落ち着いて観覧する特別な場所であると感じさせます。
ホールから外に出た際にはカーテンウォール越しに広がる外部空間が迎えてくれる構成となっており、近くにある休憩スペースにとどまりたくなります。
そこから、屋外への動線としては下階につながる階段のクランクが自然に外部に導いており、観劇を見終わった後に通る階段として、ゆったりとした印象を与えています。
弘前市立博物館
市民会館の北側に隣接して建てられています。残念ながら、当日は休館日であったため、外部からの見学をなりました。
この建物の外装は前川國男さん設計で多くみられる赤レンガ打ち込みタイルが用いられています。市民会館の本実型枠を用いた打ち放しコンクリートと表情が対象的です。建物の用途上重要物品を収蔵するため、それらを保護するための躯体を保護している印象を受けます。当時のコンクリート技術を鑑みた結果、テクニカルアプローチに基づきタイル打ち込み工法の採用に行き着いたものと思われます。
現在において、市民会館や同じく前川さん設計の東京文化会館は素晴らしい状態で維持されています。博物館のような場合においても、同様のアプローチによる前川建築を見てみたかったと感じました。
(文責:庄司)
by sekkeiarai
| 2015-06-08 21:53
| 行事