2011年 07月 19日
「こばとこどもえん」 |
先日、柏市にある「こばとこどもえん」の見学会に参加してきました。設計は山崎壮一建築設計事務所の山崎壮一さん、構造は、なわけんジムの名和研二さんです。
「こどもえん」とは、保育・教育・子育て支援を一体的に行う施設で、従来の保育所と幼稚園の垣根を越えるべく作られた新しい制度です。この建物は既存の保育所の増築としてつくられ、今年の4月から使われはじめました。
建物はサッカーボールのような六角形を基本としたお椀型の天井と、それを支える立方体を45度に振った菱形の小部屋からなる単位で構成され、その単位の反復で全体ができています。無限に続く単位がたまたま切断されてそこにある感じ、といったほうがよいかもしれません。
これで木造だというから驚いてしまいます。木造であることを無理に表さずに木造の良さ(経済性、加工性、自給性、熱的優位性)をとりいれつつ、空間の連続性や抽象性を優先させているのも特徴と言えそうです。
中に入ると、トップライトからの清々しい光が部屋中に満ちていて、時間がゆったり流れているように感じました。また、トップライトを開けると涼しい風が無垢材の床を伝って入ってきて、僕たちの体を通り抜け、トップライトから流れ出て行きました。これはたまらなく気持ち良いです。
子供たちの描くおうちの絵に登場するいわゆる「家型」が、この建築では「実」の「形」ではなく、グルンと裏返って「虚」の「空間」として反復されるのもひとつの見所です。なんとよくみると45度振れた方向にも「虚」の家型が連続しています。子供たち気づいてくれるかな?
小さな気配りもたくさんちりばめられていました。小さな子供にも使いやすい引き戸の手掛けや、くぐって遊べる小さな小さな扉、合体させるとベビーサークルとしても使えるベンチ。これは握り玉がついていたり、鏡面の背もたれになっていて赤ちゃんが覗いて遊べるようにもなっていました。丸柱の衝突防止の緩衝材もただ付いているわけではありません。目盛りが振ってあって身長が測れるようになっています。案内の表示もとてもかわいくて、建物の印象を親しみやすいものへとぐっと引き寄せているように思います。
見学会の日は延期されていた昨年度の卒園生の謝恩会が行われていました。この日に来ていた子達はたった一日だけ、このちょっと不思議な建物を体験できたわけです。男の子も女の子も、雄叫びをあげながらあっちこっちをいじくりまわし、怒涛のように駆け抜けていきました・・・すごい。こういうの、僕だったら一生忘れないかも知れないなあ。
なんとも幸せな気分になれた見学会でした。山崎さん名和さん、勉強になりました。ありがとうございました。
文:大久保元彰
「こどもえん」とは、保育・教育・子育て支援を一体的に行う施設で、従来の保育所と幼稚園の垣根を越えるべく作られた新しい制度です。この建物は既存の保育所の増築としてつくられ、今年の4月から使われはじめました。
建物はサッカーボールのような六角形を基本としたお椀型の天井と、それを支える立方体を45度に振った菱形の小部屋からなる単位で構成され、その単位の反復で全体ができています。無限に続く単位がたまたま切断されてそこにある感じ、といったほうがよいかもしれません。
これで木造だというから驚いてしまいます。木造であることを無理に表さずに木造の良さ(経済性、加工性、自給性、熱的優位性)をとりいれつつ、空間の連続性や抽象性を優先させているのも特徴と言えそうです。
中に入ると、トップライトからの清々しい光が部屋中に満ちていて、時間がゆったり流れているように感じました。また、トップライトを開けると涼しい風が無垢材の床を伝って入ってきて、僕たちの体を通り抜け、トップライトから流れ出て行きました。これはたまらなく気持ち良いです。
子供たちの描くおうちの絵に登場するいわゆる「家型」が、この建築では「実」の「形」ではなく、グルンと裏返って「虚」の「空間」として反復されるのもひとつの見所です。なんとよくみると45度振れた方向にも「虚」の家型が連続しています。子供たち気づいてくれるかな?
小さな気配りもたくさんちりばめられていました。小さな子供にも使いやすい引き戸の手掛けや、くぐって遊べる小さな小さな扉、合体させるとベビーサークルとしても使えるベンチ。これは握り玉がついていたり、鏡面の背もたれになっていて赤ちゃんが覗いて遊べるようにもなっていました。丸柱の衝突防止の緩衝材もただ付いているわけではありません。目盛りが振ってあって身長が測れるようになっています。案内の表示もとてもかわいくて、建物の印象を親しみやすいものへとぐっと引き寄せているように思います。
見学会の日は延期されていた昨年度の卒園生の謝恩会が行われていました。この日に来ていた子達はたった一日だけ、このちょっと不思議な建物を体験できたわけです。男の子も女の子も、雄叫びをあげながらあっちこっちをいじくりまわし、怒涛のように駆け抜けていきました・・・すごい。こういうの、僕だったら一生忘れないかも知れないなあ。
なんとも幸せな気分になれた見学会でした。山崎さん名和さん、勉強になりました。ありがとうございました。
文:大久保元彰
by sekkeiarai
| 2011-07-19 12:06
| 建築探訪